左脳は右脳の夢をみる

24歳で脳出血を起こしても、この世界で誰かを守るために生きる1人の軌跡。

ビスケット1枚とあめ玉1つ

今回は私の生活今昔について―私は過去にも書いたように「心がひねくれた」ことが原因で休職を2度させていただきました。

 

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1度目の休職時はなぜ自分がベッドから起き上がることすら難しくなったのか考えることすらできませんでした。怠慢だと思われる方もいらっしゃると思います、現に当時の私もそう思って自分を責め続けていました。でも、抑うつ状態の脳は疲弊しきっているため、当たり前のことを達成することが難しいのです。

例えば…お恥ずかしい話ですが、2度目の休職時は付き合って一年になる恋人にお風呂場の前まで連れて行ってもらえなければ5日間シャワーを浴びれなかったこともあります。しかし、そんな状態でも人生を刻む秒針は止まってくれませんーだから、なおさら、ひねくれモノの私は「実家に戻りなさい」という主治医の忠告に耳を貸しませんでした(2度目の休職時も)せっかく社会人になり、実家を出たことで手に入れた「自立した生活」を放したくなかったし、大学で学んだ映画や芸術に関する知識を活かせていない現状に満足できるはずがなかったから。

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「速く!もっと速く!」

今回は先日に続いて、力強い言葉をくれたエノモト先生とのリハビリについて。

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 エノモト先生は小柄で溌剌としたアラサーの理学療法士。柔道に打ち込んでいた高校時代に理学療法士になることを決意したそう。

「都内の会社にパンプスを履いて出勤したい、装具も杖もなしに」と伝えた時、確か私はまだリハビリ外での杖歩行を許可されていなかったけれど、先生はそんな背伸びし放題の私に「じゃあ、やろう」と前を向いて応えてくれた大事なパートナーです。

ひたすら歩けるし、一緒に【違和感】を解決してくれる先生とのリハビリは楽しくて仕方がありません。

私が脳出血で倒れ、左手脚が不自由になったと知って「リハビリ大変だと思うけれど頑張ってね」と連絡をくれた人もいました。

でも、私はこの言葉にある疑問をもっていました

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私の違和感

2年ほど前の初夏ー神保町でオルハン・パムクの『僕の違和感』上下巻を渋々棚へ戻した日のことを思い出す。彼の言葉から香る崇高さや艶美さすら感じさせる装丁の柔らかな手ざわりをひねくれた左手が覚えているほどにその本を離し難かったのですが、私は二つの理由からこの本との別れを決意したのでした。

一つ、上下巻合わせて約7,000円という値段から。二つ、社会人1年目の私が向き合うべき言葉は書面ではなく、仕事で関わる生身の人間との間にあったから。

 

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社会人になるまで国境を越えた古今東西の映画・本を生きる糧にしていた私の心は小さな感動すら逃すまい、と随分と敏感になっていました。例えばF・キャプラ監督『スミス都へ行く』(1939)の壮大なモブシーンに涙を流したり、新人作家・高橋弘希の『指の骨』では「戦時を知らない世代」が描いた歩兵の腐敗臭すら漂うような生々しい死の裏に隠された心の機微に感涙するほどに。

でもこの頃の自分を厳しい目で見れば、芸術から「《こっそりと》《受動的に》言葉を受け取っている」に過ぎません。更にはこの作品から受け取ったと錯覚していた「言葉」すら自分の独白に過ぎない。つまり、私はひねくれモノの自分が認められず、叱責されることを恐れて対話から逃げていたことになります。

だから、社会に出て感じた【私の違和感】を解消するべく、一旦芸術(≠アート)と距離を置いてひねくれた心の自分と、そして周りの人と会話をする、という今まで怠ってきた努力をすることにしたのでした。つまり『僕の違和感』との別れは【私の違和感】を強めず、社会人として生き残ろうと考えた末の決意。

 

そして、昨日ー院内で歩行練習をしている私は新たな【違和感】を覚えました

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はみ出しモノは正直モノであれ

今回は少しだけ情けない社会人1年目の話を交えて。

社会人1年目の時ー私は「多量の請求書を三つ折りにする」「多量の請求書とその控えを分別する」というごく簡単な仕事すら満足にできませんでした。

なぜか?ー頭の中で先輩の指示をまとめることが難しく、半ば混乱状態で仕事を続けている状態だったから。

そんな私を根気強く指導していた上司を困らせ果てた先にかけられた言葉がありますー「これは幼稚園児でもできることだよ?」

その方は本当に仕事に対して真っ直ぐな方で、社会人としての私の恩人でもあります。今でも心配そうに語りかけるその方の表情をまざまざと思い出せる程にこの言葉は今でも忘れられません。

その言葉の鋭利さ故にではなく、「はみ出しモノ」である事実を初めて強く認識した瞬間だったから。

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会心の一撃

復職へ向けて真っ直ぐに進む(正しく目標設定をする)ためにリハビリの先生方にお時間を頂いてミーティングを行った私。

 

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今日のミーティングのために昨晩消灯時間ギリギリまで机に向かっていたのですが、結局復職までの大雑把なスケジュールすら想像がつかない私がまとめられたのは以下の3つだけ。

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ストレイト・ストーリー

今日から室内での杖歩行を許可された私ですが、まだ左脚で体重を支えることが苦手でどうしても身体を右に傾けながら歩いてしまいます。

だから、感覚麻痺のある私が身体を真っ直ぐに歩く為には鏡を使うかリハビリの先生方に指摘していただく必要があります。

日常生活の自立や復職への道のりを歩く私も同じく、専門的な知見や第三者の意見なしには左手脚の麻痺という初めての【感覚(体験)】故に曲がった道、つまり遠回りの道を進んでいるかもしれません。

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2ヶ月ぶりの「ただいま」

私には【コパン】という名前の飼い猫がいます。その名の通り私の【仲間】のような存在で、里親さんから引き取った翌日には既に私の膝の上で寝てしまうくらいに人懐っこく、平日の朝に眠気と戦いながらほおばる食パンを横からかじってしまうくらいに食いしん坊なオス猫です。そして心の不調で2度の休職をしても諦めなかった私の生きる意味。

3月3日午前中ー脳出血で倒れたあの日、私は一人暮らしをしていた都内のマンションを出ましたー「コパちゃん、心療内科に行ってくる!」といつもするように行き先を告げた後、彼の頭にキスを落として。

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