左脳は右脳の夢をみる

24歳で脳出血を起こしても、この世界で誰かを守るために生きる1人の軌跡。

枯渇しかけの語彙力

たぶん私の頭蓋骨の中に収まっている脳は奇形のあった脳動脈と静脈瘤を取り除かれた影響で今までとは異なる回路で電気信号や血液(?)が流れていて「えっ!?このクライアントの引き継ぎ受けてないんですけど!大体あのぐにゃぐにゃにひねくれてた脳動脈、引き継ぎもせずにどこいったんだよ!はあ!?この間の手術で取り除かれた!?」ーとそれどころじゃないとは思うのだけれど、今この文章を書いている今の私は24年間の人生の中で最も活字に飢えています。

感受性豊かで空想癖のある私は脳出血で倒れてから体験している物事について様々な感情を抱くのだけれど、このブログも然り、リハビリの先生方との会話も然り、「あゝ!どう伝えたらよいのだろう!」ともどかしさに苦しむことが多々あります。

きっとこれは、私の感情が上手く言語化できていない鬱憤から生まれる苦しみなのではないかと朝食のおでんを食べながら今朝、ぼんやり考えていました。

手術後体調が安定して岩波文庫の『虞美人草』(夏目漱石)を岩波文庫特有の細かい文字に眉根を寄せながら読んだり、オルハン・パムクの『無垢の博物館』を未だ見ぬ地、トルコに想いを馳せながら読んだり、会社の同期が持ってきてくれた鎌田敏夫の『世界で一番ロマンチックな海』を切ない恋に胸を締め付けられながら読んだりしてはいるのですが、読書家だと自負していたはずの24年間の人生で溜めた、私の「語彙力」という名の井戸はついに枯渇しかけているようです。

私の最高にひねくれた脳よ、傷を癒し、正常な状態に近けるために私はしっかり食事を摂るし、リハビリも(泣きながら)頑張る。

だから、一つだけ相談に乗ってほしいーこの数ヶ月かかるであろう入院生活で読みたいだけ本を読んでもいいだろうか?

そうしないと間違いなくひねくれて脆い私の心は言語化できない感情でいっぱいになり、かつて君の中にいたあのぐにゃぐにゃにひねくれた脳動脈のように破裂してしまうから。

大丈夫、夏目漱石はしばらくやめておこう!小難しいのは後回しにして伊坂幸太郎とか宮部みゆきあたりから始めてみようじゃないか。スピード感のある展開が特徴的な舞城王太郎もゆっくり時間が流れる入院生活には丁度いいかもしれない。