左脳は右脳の夢をみる

24歳で脳出血を起こしても、この世界で誰かを守るために生きる1人の軌跡。

カッコーの巣を越えて

母や友人のおかげで私の読書欲は満たされているのだけれど、根本にある【映画狂(シネフィル)】魂は冷めやりません。
念願の『アメリ』を先日観て…心満たされたと同時に、気が付いたことが一つ。

人と関わることが苦手で空想の世界に閉じこもるアメリと変わり者のニノの「ラブストーリー」と位置付けていたはずの作品が人と関わることで心豊かに人間として成長していくアメリの「成功譚」に変化していたこと。なんと私は脳が生まれ変わった上に感受性とモノの見方まで生まれ変わっているようです。

そうなると…フランク・キャプラの『素晴らしき哉人生!』(https://www.google.co.jp/amp/eiga.com/amp/movie/16876/)を今の私はどう観るのでしょうか。
クリスマスツリーを囲んで歌う街の住人たちと主人公の姿ではなく、人生に失望して橋から身投げを決意した主人公に涙するかもしれない。
じゃあ、ルビッチの『ニノチカ』(https://www.google.co.jp/amp/eiga.com/amp/movie/47554/)は!?
冷徹な美女ニノチカが劇中初めて笑ったあのシーンでお腹を抱えながら笑い泣きをするのではなく、ロシアに帰国した彼女が同士とディナーを食べているシーンに仲間の有難さを感じ、心打たれるかもしれない。
じゃあ、成瀬巳喜男の『稲妻』(https://www.google.co.jp/amp/eiga.com/amp/movie/34812/)は!?
デコちゃん(高峰秀子)がぶどうの種を縁側から吐き出す姿に可愛らしさを感じて微笑むのではなく、家族に振り回されて涙を流すデコちゃんにつられて泣いてしまうかもしれない…
ジャック・タチなんかも楽しげで今の私には良いかもしれない!あの意味の分からないゴダールの映画も今なら少し感じることがあるかもしれない!

ーあゝ映画が観たい!


私は日芸映画学科時代、少ない数字ではありますが月に10本映画を観ることを目標にしていました。しかし、社会人1年目で心の病に罹ってからは月に1本も観られない日々が続きました。
映画好きである私を気遣って先輩が「オオサワ、最近映画観てるの?」と声をかけて下さっても「いえ…最近観られてなくて…」と力なく答えるだけしかできませんでした。
その反動なのか、変なハナシですが脳出血で左手脚がひねくれた代わりに心が真っ直ぐになって心療内科という名の「カッコーの巣」を越えたからか、とにかく映画が観たくて仕方がありません。

ー「オオサワ、最近面白い映画観た?」

ー「クマザキさん!それが観ちゃったんです!」

なんて会話ができる日が早く来ますように。