左脳は右脳の夢をみる

24歳で脳出血を起こしても、この世界で誰かを守るために生きる1人の軌跡。

第2の故郷に想いを馳せて

人生の岐路に立ったな、と感じた時必ず聴く曲があるーショパンの『ピアノ協奏曲第1番ホ短調』。この曲はウィーンへ旅立つショパンが故郷ワルシャワを想って作曲したもので、狂ったようにブーニンの演奏動画を見ていた時期にこの曲と出会いました。

私は3歳から高校2年生まで断続的にピアノを習っていたものの、この通りひねくれモノなので高校時代は親の許可なくレッスンを直前に休んだりする困りモノでした。

 

だからピアノ(とビオラ)を演奏する方はからっきしなのですが、クラッシックを聴くことは好きで特に繊細で哀愁漂うショパンの音楽は私の感性に合っていたのか『ピアノ協奏曲第1番』に出会った後もショパンの楽曲を収録したCDを借りて度々聴くようになりました。

 

そして明日ー私は脳出血を起こして救急搬送され、11時間の大手術を経験した後に「左手脚までひねくれたWeb編集者」として第2の生を預かった故郷、慶應義塾大学病院から実家千葉県内にあるリハビリ病院へ転院します。

 

術後ICUにいた時の記憶からモニターの音を聞いただけで声を上げて泣く私がぼんやり見つめていたドコモタワー、そして母を傷つけた言葉に反論しようと「患者のご意見箱」に投書する言葉を一方的に書き連ねたあの時に私が睨んだドコモタワー、そして…故郷を旅立つ今の私がその荘厳さを賞でるように眺めるドコモタワー。

 

時間は連綿として続いているはずなのに、目の前の景色が変わっていることに気が付いた時ー私の脳に静謐なオーケストラの序奏を打ち破り、「過去に浸ってばかりいるな、出発の時だ」と言わんばかりの力強いピアノの音が響き渡りました。

 

次にこの景色を見る時は車椅子からではなく、自分の足で立って見てみたい。

 

次にこの場所へ戻って来る時は第3の故郷と人生を胸に。