左脳は右脳の夢をみる

24歳で脳出血を起こしても、この世界で誰かを守るために生きる1人の軌跡。

人生の責任者は私

実家付近のリハビリ病院へ転院して今日で5日が経った。1日1時間だったリハビリの時間が3時間になり、心地よい疲労感のおかげで夜は眠剤も必要ありません。

 

しかし、不安は山積みでー

 

特に心配なのが「ベテランを付ける」と言われていたにも関わらず、担当の作業療法士さんが20代と若い方ばかりだということ。

例えば高次脳機能検査の時。検査の説明を説明書を棒読みする姿を見て思わず身体が硬直しました。

どんなに辛いリハビリでも仕事に復帰するなら血反吐を吐いてでも着いて行くーでも、私の仕事に支障が出る恐れが高い「左手の麻痺」と「高次脳機能障害」を診る先生がこの人!?…拭えぬ不安が降りかかってきました。

 

挙げ句の果てには慶應大病院で「半側空間無視」の可能性があると言われたトラウマになっている検査の用紙を何の前置きもなく渡されることに。机の向こうにいる作業療法士と私の間には越えられない壁があるように感じられましたーあ、この人には私が高次脳機能障害を目の前にしたときの辛さは分かっていない。慶應大のイシザワ先生は私の崩れそうな心に寄り添おうと頻りに声をかけて下さったけれど、この人はまだ私の心を理解しようという段階ではなく、仕事をするだけで精一杯なのかもしれない…

そして、私の目の前に置かれている用紙に目を落とすと歪な形の花の絵がぐしゃりと広がっていました。作業療法士さんの後ろには見学の学生がいて、その絵を覗き込んでいる姿が見えます。

 

私はもう、耐えきれませんでしたー「すみません、新人の教育が必要なことは分かるのですがこのような状態を見られるのは心地良いものではありません…あと、紹介状でご存知だと思いますが私はこの検査を受けるーつまり、この【半側空間無視】と【構成能力低下】を直視するのは2度目なんです。先生にはそれがどれだけ辛いか分かりますか?そして私はただ、仕事に戻りたいんです。それだけのサポートをきちんとしてもらえないと私は困ります。正直なところ、今私は先生に治療をしてもらうことがとても不安です…」

ー『新人さんの件はすみませんでした…』

この後、私は検査結果で【注意欠陥障害】もあるかもしれない(例:仕事を複数頼まれたら数個抜けているなど)と告げられて治療への不安とマイノリティの近くにいながらその気持ちを汲んでいない言葉への怒りでただ涙を流しながら部屋へ帰りました。

 

私が傷付いた分だけ先生のことを私は傷付けているのかもしれない。でも、ここでリハビリに励む私には先生の気持ちを斟酌する余裕はないと思います。

 

私の人生の責任者は私でしかないから。そのために私がこのリハビリ期間でやるべきことは、諦め切れない人生への情熱を先生方と共有することから始まる気がしています。

思えば脳出血で倒れてから今までー手術を成功させてくれたのはミワ先生だったし、リハビリも苦労して先生とコミュニケーションを取ることがなかった。つまりー私は自分の人生の責任を肩代わりしてもらっていたに過ぎなかったのかもしれません。