左脳は右脳の夢をみる

24歳で脳出血を起こしても、この世界で誰かを守るために生きる1人の軌跡。

明(あきら)める、ということ

キーボードに貼ったピンクのテープを二枚、剥がす。

剥がれた爪の上から看護師さんに貼ってもらった絆創膏をはがした時のように、境界線を取っ払うことで起きるかもしれない未来に少し、怯えながら。

この「テープ」とは、左指で打つと決めた範囲(W・E・R・A・S・D・F・Z・X)を視覚化させるためのもの。

しかし、この範囲を広げ、かつスピードを病前に近づけることに薄々限界を感じていました。

リハビリ病院入院中から現在までの約4か月間で入院当初はAのみだった該当キーを上記8個まで広げましたが、かといってスピードが比例するわけではなく、深部感覚障害(指の位置や形が感覚で判断できない障がい)がある私の指では広範囲かつ、スピーディーなブラインドタッチが難しいのです。

さらに、病前と比較して「文字起こしに最大1.5倍の時間がかかる」という問題に対して始めたタイピング練習サイトでの結果は「C」(※同期は「A」)で横ばい。

 

ーそして、昨晩。

ふと私は共に物件探しから帰宅した父に言いました「左指の代わりに右指を使う」と。

といっても、何か方法はないかと思い、行きついたのが下記ソフト。

 

片手入力ソフト「WKey」とは-製品情報 | 株式会社シグミックス

キーボード上の各文字キーのシングルタッチ、ダブルタッチを区別することによって必要なキーの数を半分に減らし、片手による文字入力を可能とする、常駐型キーボードユーティリティソフトです。右手でも左手でも使用することができます。

つまり、健常な指で片方の指がタイピングすべき範囲を補うソフト。

慣れるまで少し時間はかかりそうですが、一つの方法として試している最中です。

 

私は心が、左手脚が、ひねくれても諦めませんでした。

しかし、今回初めて「明める」ことを決断して感じたのは湧出する口惜しさを一瞬にして払拭する気力。

「今の先」を生きる気力、希望。

 

数日前読んだ、沼田尚志さんのインタビュー記事で彼が述べていた言葉が弾けた。

 

soar-world.com

今は物事を断念するみたいなネガティブな意味を持つんですけど、諦めるって実はすごく古い言葉で、昔は物事のできることとできないことを瞬時に判断する、「明るい」っていう字に「らむ」を振って「あきらむ」というのが語源

 

それで、先生からは「僕が君に言っているのはそっちの意味での諦めるってこと。もっと判断を早くしたほうがいい。できないことは一生できないから。野球はもうできないんでしょ。だったら、それはもう考えなくてよくて、できることだけ頑張ってやりな」って言われて。

 

 

結論ー諦めたくないことのために「明める」ことは何も恥ずかしくないし、自分の現状を悲観することもありませんでした。

一度灯った明かりがただ、この先の道を照らしてくれるだけ。