「速く!もっと速く!」
今回は先日に続いて、力強い言葉をくれたエノモト先生とのリハビリについて。
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エノモト先生は小柄で溌剌としたアラサーの理学療法士。柔道に打ち込んでいた高校時代に理学療法士になることを決意したそう。
「都内の会社にパンプスを履いて出勤したい、装具も杖もなしに」と伝えた時、確か私はまだリハビリ外での杖歩行を許可されていなかったけれど、先生はそんな背伸びし放題の私に「じゃあ、やろう」と前を向いて応えてくれた大事なパートナーです。
ひたすら歩けるし、一緒に【違和感】を解決してくれる先生とのリハビリは楽しくて仕方がありません。
私が脳出血で倒れ、左手脚が不自由になったと知って「リハビリ大変だと思うけれど頑張ってね」と連絡をくれた人もいました。
でも、私はこの言葉にある疑問をもっていました
―「リハビリって、本当に大変なの?」
今ならこの問いに答えられるー「大変、と感じる間もないほどに前に進むしかない」
今日、私はひねくれた左脚に装具と1kgの重りを付け、杖を片手に5分間歩き続けました。
「じゃあ、最後の1分間は都内を歩くサラリーマンのスピードで歩いてみようか」
ー『はい!』
不安を打ち消すよりも、新しい課題に取り組めることへの高揚感のために思わず部活動に打ち込む中学生のような返事をしてしまいました。
しかし、軽やかな声色とは裏腹に左脚は上手く前へ進んでくれません。
インタビューのある日の朝、駅の出口から会社まで足早に向かっていた自分の姿を想像する―あの日に感じることのなかった身体の火照りを感じながら。
疲れ始めた私の脚を見てエノモト先生が力強く声をかけるー「速く!もっと速く!」
その後、脚の装具を外している最中に現実と向き合う恐怖からそっと先生に問いかけてみました。
「エノモトさん、私はまたあの忙しない東京を歩けるようになるのでしょうか…」
ー『今のスピードに着いてこれていたし、速度は問題ないと思うよ。でも、問題は前から人が来たとき。
空間認識能力が衰えたままだと人との距離感を掴みにくいから、上手く避けられるようになるには練習が必要。』
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馴染みのある 池袋駅近辺の雑踏を思い出して、左脚のひねくれた私がそこにいる姿を想像し難かった私は思いつめたように黙ってしまいました。
そして、そんな私の不安を察知した先生は飛び跳ねるようにこう言いました―『だから退院までに通勤ラッシュ帯の電車に乗って、千葉駅まで行くよ!』
都内のそれには劣りますが、千葉駅も複数の路線が乗り入れており、朝と夜のラッシュ時はホームが社会人と学生で埋まるほど混雑します。
「エノモトさん…今の私にできるでしょうか…」
ー『だって、私たちはここでの生活の自立だけじゃない、そのもっと先を目指しているんでしょ!?』
そうでした、私は現在の仕事に異動させてくれた上司や部署の先輩方の助けを経て、やっと仕事に生き甲斐を見出だせるようになった。だから、どうしても「今の仕事に」戻りたい。
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Web編集者の仕事だったらどこでも良いわけじゃない。あのメンバーの元で、仕事がしたい。
だから、嘘偽りない、ひねくれモノの私を受け入れてくれたあの場所を目指してひねくれた左脚を前に出そうー速く、もっと速く。